アブリルは、対応に追われていた。
インフォメーションでは、次から次へとひっきりなしに電話や映像通話がかかってくる。
そして、1時間前ほどから、普段と比べるとあり得ない量の問い合わせが殺到していた。
用件はわかっている。
4時間ほど前、トップキャビネット内はあわただしくなり、男の情報が流れるようになった。
なんでも、統合ワープシステムに登っているという、冗談のような知らせである。
すぐさまセキュリティが動き、数機の飛行ロボや、サイボーグが出動したが、思いのほか彼は粘り、身柄を押さえることができない。
さらに、飛行車や、かなりの数の飛行隊を足しても、彼を捉える事が出来ず、その驚異的な運動能力は、セキュリティ、ないし、トップキャビネットのオリジンには予想外であった。
そして、当然その他オリジンにとっても予想外であり、セキュリティカメラの映像の視聴率は見る見る上がっていったのだった。
セキュリティは何をしている、早くとっちめろ、のように批判的なものもあれば、スポーツ分野などで、彼は誰なのかを教えてほしい、と言った類の、スカウト要素のある問い合わせも、徐々に増えた。
最初のうちは、それについての電話はあれども、数こそ30分に数件程度であった。
それが、その後3時間で見る見るうちに増え、今や休む暇もないほどにやかましい音が鳴り響いている。
上記に述べたような件についてももちろん増えたが、何より1番多かったのが、一般市民による抗議で、「早く捕まえろ」と言った類のものではなく、「やり過ぎなのではないか」、「非道だ」などの、セキュリティ側のやり方を責めるものが圧倒的であった。
実際に、オリジン1体に対し、あの量の戦闘機はぞっとするが、それ以上に、ただひたすらと登り続ける姿に、多くのオリジンが心を寄せ、惹かれているのである。
そう言うわけで、その苦情の全てに対応し、説明をするのが、トップキャビネットインフォメーションの役目であり、アブリルが対応に追われている理由であった。
1件の苦情対応が終わり、アブリルが一息つこうとすると、すぐに、ピーン、ピーン、と、電子音が鳴る。彼女はうんざりしていた。